カテゴリー「裁判員裁判」の6件の記事

ニュース 多摩パブリック法律事務所が開設

 多摩パブリック法律事務所所長の井上章夫弁護士は「三多摩格差と言われるが、インフラも含め不十分な中、司法分野も不十分で遅れていると思う。弁護士会が組織として公設事務所設置し人権を守っていくというのが第一の意義だと思う」と話しています。

 多摩パブリック法律事務所が,開設されました。全国では10番目,多摩支部としては初めての都市型公設事務所になります。事務所の内部の様子は,東京メトロポリタンテレビ(TOKYO MX)の映像で見ることができますが,とてもきれいなオフィスですね。まだオープンしたばかりですが,将来,法テラス多摩と並んで,多摩支部における裁判員裁判,被疑者国選の拠点となることでしょう。

TOKYO MX
http://www.mxtv.co.jp/mxnews/news/200803056.html

毎日新聞の記事
http://taoka.cocolog-nifty.com/himatera/2008/01/post_9268.html

ひまテラNEWS 東京新聞「多摩に公設法律事務所 新制度対応で初 弁護士不足補う」
http://taoka.cocolog-nifty.com/himatera/2008/01/post_9268.html

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「難解な法解釈と裁判員裁判」刑事法ジャーナル11号

 本日,刑事法ジャーナル11号が届きました。

 特集のテーマは「難解な法解釈と裁判員裁判--責任能力に関する模擬裁判を通して」であり,森一郎事件の模擬裁判を素材にして,裁判官,検察官,弁護人の立場から報告が寄せられています。弁護人の報告は,私が執筆しました。3名が別々に執筆したため,内容的に重複する部分もあり読みづらいですが,それぞれの立場から立ち入った分析がなされています。

 たとえば,責任能力の判断基準について,従来は,弁識能力と制御能力の二つの基準が用いられてきましたが,駒田裁判官は「自己の判断で犯罪をおかしたかどうか」という基準を提案しています。ただ,森一郎事件では,被告人に殺意が認められることは前提なのですから,「殺すつもりはあったが,自分の判断で殺したのではない」などという心理状態が想定できるか疑問です。裁判員にも理解されないでしょう。これまでの模擬裁判を傍聴していても,「弁識能力」と「制御能力」という二つの基準は,それなりによく考えられており,わざわざ言い換える必要はないのではないか,という意見がかなり有力でした。

 また,評議において,責任能力に関する裁判例等を配布することは,いい提案だと思います。ただ,その場合には,量刑資料と同じで,事前に検察官と弁護人に示しておくべきでしょう。たとえば,公判前整理手続において,検察官と弁護人に対し,いくつかの裁判例を示しておけば,論告や弁論で,どの判例と似ているとか,どこが違うという議論が可能になります。それをしないと,検察官から大量に心神耗弱の裁判例が提出され,評議が混乱してしまうかもしれません。裁判例を利用する場合には,きちんとルールを定めておく必要があるでしょう。

 ほかにも,面白い議論がなされています。興味のある方は,お読みください。

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「刑事裁判を創る 模擬裁判のすすめ」全友ニュース(未刊)

 裁判員制度は,すべての弁護士にとって未知の課題である。その意味では,1年目の弁護士も,30年目の弁護士も,同じスタートラインに立っている。むしろ,若い弁護士の方が従来の実務にとらわれず,斬新な発想を取り入れることができるかもしれない。まだ今年の夏頃までは模擬裁判が予定さている。せっかくの機会だ。ぜひ若い弁護士に積極的に参加していただきたいと思う。来るべき裁判員裁判を創るのは,私たちなのだから。

 「刑事裁判を創る 模擬裁判のすすめ」全友ニュース(未刊)をアップロードしました。第二東京弁護士会の全友会という団体の機関誌に投稿したものです。森一郎事件を素材として,裁判員裁判のプラクティスについて論じています。特に目新しいことが書いてあるわけではないですが,若い読者が読むことを想定して,読みやすさに配慮しました。興味のある方は,ご覧ください。

(2008年3月5日リンクを修正しました。)

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ニュース 裁判員裁判で,鑑定人2人を対質

 来年5月までに導入される裁判員制度のスタートを前に、結論の異なる2種類の精神鑑定書を作成した鑑定医2人を同時に証言台に立たせて、交互に尋問する方式を取り入れた模擬裁判が26日、東京地裁(林正彦裁判長)で行われた。こうした尋問方式を模擬裁判で行うのは全国で初めて。

 昨日から3日間,東京地裁刑事20部で,裁判員裁判の模擬裁判が行われています。事件は森一郎事件で,統合失調症の被告人が妄想に影響されて,レンタカー会社の従業員を殺害してしまったという殺人被告事件です。これまで東京三会では,いわゆるフル企画(私が弁護人の一人を務めました。)のほか,全員参加型の模擬裁判が2回行われています。これが,4回目の森一郎事件の模擬裁判ということになります。

 この模擬裁判の目的は,鑑定人2人を対質することです。対質というのは,証人を2人同時に尋問することです。この模擬裁判では,簡易鑑定を行った太田医師と,本鑑定を行った横山医師の2人の意見が対立しているのですが,その2人を同時に証人尋問して,違いを浮かび上がらせようというわけです。私は今回は弁護人ではなく,被告人!で参加しました(どこかの新聞やテレビに映っていたかもしれません。)。

 私も実際に対質を見るのははじめてでしたが,鑑定人のお二人がとても分かりやすく説明されていたこともあり,非常に分かりやすいと感じました。ただ,今回もそうでしたが,対質の場合には,まず裁判所から質問する必要があるでしょう。一方当事者からの尋問は,自分に有利な証言を引き出そうとするため,論争的な質問が多くなり,分かりづらいように思いました。証人が1人であれば,通常は請求者が主尋問を行えばよいのですが,対質の場合には証人が2人いますから,まず裁判所から尋問する方がよいと思います。

 また,今回は鑑定人のお二人が,とても分かりやすい説明をしてくださいましたが,実際には議論がかみ合わない可能性もあると思います。たとえば,統合失調症であれば原則として心神喪失と考えるか(いわゆる不可知論),それとも症状と犯罪行為の関係を具体的に考えるか(いわゆる可知論),という大きく二つの考え方がありますが,これが違っている場合には,対質をしてもかみ合わないことが多いでしょう。共通の土台に立ってはじめて,考え方の違いが浮き彫りになるのではないか,などと感じました。

 明日,論告・弁論のあとに最終評議の予定ですので,有罪になるか無罪になるか,心して判決を待ちたいと思います。

(2007年2月27日追記 心神耗弱で,懲役5年の判決となりました。)

産経新聞の記事
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080226/trl0802262021014-n1.htm

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読売新聞「精神鑑定テーマに模擬裁判、「やはり難しい」と裁判員」

 2009年に始まる裁判員制度に向け、精神鑑定をテーマにした模擬裁判が19日までの3日間、東京地裁で行われた。
 難解な専門用語を避けて市民も理解できるよう工夫を凝らしたが、一部の裁判員からは「やっぱり難しい」との声が上がっていた。

 この模擬裁判(森一郎事件)は,責任能力が争われる事件の審理方法を研究するために行われたものです。私は,弁護人の一人として参加しました。結果は,記事にあるように,心神喪失が3(裁判官2,裁判員1),心神耗弱が6(裁判官1,裁判員5)で,懲役6年となりました。鑑定人の意見は心神喪失でしたから,弁護団としては「負けた」ということになります。

 しかし,私は「勝った」「負けた」ということより,裁判員が責任能力をきちんと理解し,意見を述べられることが分かったことに,非常に大きな意味があると感じました。評議では,責任能力の概念や判断方法をふまえた上で,「鑑定書はどうも腑に落ちない」「この点は,どう考えればよいのか」などと意見が述べられており,感動しました。

 読売新聞は,「『やはり難しい』と裁判員」という見出しですが,記事をお読みいただければおわかりのように,「裁判員として参加した男性会社員は『裁判官の説明や証人尋問を通じて、わからなかった点もどんどんわかった』と評価したが、『責任能力とは何かは理解はできたが、事件にどう当てはめるかが難しかった』」という内容です。

 また,毎日新聞は「精神鑑定、工夫で『分かる』」という逆の見出しです。「会社員ら6人の裁判員は『鑑定書や鑑定医の尋問はよく理解できた』と評価した」「刑事弁護に詳しい弁護士は『鑑定結果を理解したうえで、私たちプロが見落としていた市民の視点を投げかけた』とみる」とありますが,こちらが正しい評価だと思います。読売新聞の見出しは結論先にありきという感じで,あまり感心しませんね。

 責任能力の判断は,私たちにとっても難しいものです。結果的に,裁判員は心神耗弱に流れましたが,どちらに転んでもおかしくなかったと思います。裁判官の判断が分かれたこともそのことを示しているといえるでしょう。弁護人としては,更に分かりやすい立証や説明を考えていかなければならないと思います。私としても,たいへん勉強になりました。

読売新聞の記事 精神鑑定テーマに模擬裁判、「やはり難しい」と裁判員
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071019icw6.htm

毎日新聞の記事 始まる裁判員制度:模擬裁判終了 精神鑑定、工夫で「分かる」 無罪ためらい
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2007/10/20/20071020ddm012040067000c.html

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毎日新聞「裁判員制度 精神鑑定絡む模擬裁判、東京地裁で始まる」

有罪、無罪を左右することもある複雑な「精神鑑定」を裁判員が理解できるようにするには、どんな審理が必要なのか。こんなテーマを掲げた模擬裁判が17日、東京地裁で始まった。百数十ページに及ぶこともあった鑑定書を大胆に5ページに簡略化したうえ、法廷で証言を聞いただけで内容を把握できるような鑑定医の尋問の進め方を探る。

 記事で紹介されている模擬裁判で,弁護人を務めています。本日,検察官立証と被告人質問。明日,鑑定書朗読と鑑定人尋問,最終日に論告弁論の予定です。テーマは責任能力で,弁護人が心神喪失を主張し,検察官がこれを争うという構図です。各地で同じ記録を素材にした模擬裁判が予定されているようですから,詳しい内容には立ち入りません。

 ただ,この事件に限らず,裁判員裁判事件での弁護人の負担は相当なものだと感じました。数か月前から公判前整理手続を重ね,精神医学の文献を読み込み,鑑定人と打合せをして,公判の準備をしなければなりません。実際には,これに加えて被告人との接見の時間を考えなければならないわけです。通常の弁護士業務をしながら,裁判員裁判事件を受任するのは相当な負担である,というのが正直な実感です。

 実際に裁判員裁判が始まったら,弁護士会の対応体制が問題になることは間違いないでしょう。そのためにも,法テラスや都市型公設事務所で,刑事専門弁護士を確保し,養成することも考えなければならない,と思います。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071017-00000021-maip-soci

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