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2008年5月

ニュース 奄美ひまわり基金法律事務所の二代目所長に大窪さんが就任

 奄美市の公設事務所「奄美ひまわり基金法律事務所」の所長が交代し、引き継ぎ式が24日、市内のホテルで開かれた。

 同事務所は、弁護士過疎地域の解消を目指し、2005年3月に開設された。初代所長の高橋広篤弁護士(32)が任期を終えて退任。5月から大窪和久弁護士(32)が所長に就任している。

 先週末,奄美ひまわり基金法律事務所の開所式に出席してきました。

 奄美ひまわり基金法律事務所は,平成17年3月に開設され,初代所長として高橋広篤さんが就任しました。奄美市(名瀬市)は,市民生活係の禧久さんを中心に多重債務問題に熱心に取り組んでいることで知られています。高橋さんは,市役所と連携して多重債務問題に数多く取り組んだ,と聞いています。今後は,弁護士偏在地域(※1)である静岡県掛川市で開業されるそうです。

 大窪さんは,今年の3月まで,北海道紋別市の紋別ひまわり基金法律事務所の三代目所長を務めてこられました。ひまわり基金法律事務所から,ひまわり基金法律事務所へ赴任したのは,大窪さんが初めてです。北海道から鹿児島まで約2100キロの大移動となりましたが,すでに奄美ひまわり基金法律事務所で,執務を開始しておられるそうです。引継式には,旭川弁護士会や紋別ひまわり基金法律事務所の先生方も出席しておられましたが,大窪さんの前任地で人望を勝ち得てきたことがうかがわれました。

 奄美には,法テラスと地元の弁護士をあわせて3人の弁護士がいますが,紋別に比べて事件数が格段に多く,弁護士が足りない状況にある,と聞いています。また,2009年からは被疑者国選弁護の対象事件が拡大され,裁判員制度も導入されるため,更に弁護士の負担が大きくなると予想されます。奄美群島への出張相談などの課題も残されています。任期中の課題は少なくありませんが,大窪さんであれば,前任地での経験を生かして,成し遂げてくれるだろうと確信しています。

 大窪さん,がんばってください。応援しています。

※1 日弁連は,弁護士が「弁護士過疎地域」とは言えないが,弁護士が人口に比べて少ない地域を「弁護士偏在地域」と呼んでいます。しかし,もともと「偏在」という言葉は,臨時司法制度調査会意見書が「弁護士の大都市偏在化」という文脈で用いたのが最初であり,「弁護士が少ない地域」を指す用語として用いるのは,あまり適切ではないように思います。

読売新聞の記事
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kagoshima/news/20080525-OYT8T00205.htm

Amami

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ニュース 柳川に三島弁護士が開業

 裁判所があるのに弁護士が1人もいない「弁護士ゼロ地域」だった柳川市に今月、三島正寛弁護士(38)が開業した。これにより、全国の弁護士ゼロ地域は6月に解消される滋賀県の1カ所だけとなった。

 日弁連は,地方裁判所支部の管内に弁護士が一人もいないか,一人しかいない地域を「ゼロワン地域」と呼んで,公設事務所や法律相談センターの設置を進めて来ましたが,本年5月に福岡県柳川市に三島弁護士が改行したことで,残るワン地域は,滋賀県長浜市だけになりました。

 福岡地方裁判所支部は,9つの支部がありますが(飯塚,久留米,小倉,直方,柳川,大牟田,八女,行橋,田川),これは,神戸地方裁判所と並んで全国最多です(なお,神戸地方裁判所の支部は,尼崎,姫路,豊岡,洲本,伊丹,明石,柏原,社,龍野)。柳川のゼロ地域が解消されたことで,福岡地方裁判所のワン地域は,柳川と八女の2つになりました。

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20080528ddlk40040734000c.html

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ブログ 夢を追い続ける車椅子の弁護士吉峯康博

 先日(2008年5月10日)、日弁連において「採用情報説明会~弁護士のあり方を地域から考える~」が行われました。 
 この中で、パネルディスカッションが行われ、大変素晴らしい内容でした。

 吉峯先生のブログに5月10日のシンポジウム「地方から弁護士のあり方を考える」の記事が掲載されています。吉峯先生のブログはいつも充実していて,読む方も元気になりますね。

ブログ を追い続ける車椅子の弁護士吉峯康博
http://yoshimine.dreama.jp/

記事 『市民の駆け込み寺』は足りるのでしょうか?
http://yoshimine.dreama.jp/blog/158.html

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管理人近況 刑法学会で報告して来ました

 このところ更新が滞っていましたが,ようやく時間がとれました。

 5月3日,4日は二弁の裁判員裁判の研修に参加し,5月5日は秩父三十四箇所のうち,十一番札所までを歩いて回りました。5番札所の食堂の雰囲気がすばらしく,そこで食べた蕎麦の味が忘れられません。札所の雰囲気は四国八十八箇所とよく似ていますが,「人との触れ合い」は,やはり四国にはかなわないようにも感じました。今年中には,歩き終えたいです。

 5月9日には,司法研修所で法テラスの説明をし,5月10日には日弁連のシンポジウム「弁護士のあり方を地域から考える」に出席して来ました(このシンポジウム,以前は「あなたを呼ぶ声が聞こえますか」というサブタイトルが付いていたのですが,いつからなくなったのでしょう)。司法修習生にとって,ひまわり・法テラスが今や一般的な選択肢の一つとして定着していることに隔世の感を感じました。

 5月17日,18日は神戸で開始された刑法学会に出席して,「被疑者国選弁護と司法支援センター」というワークショップで報告しました。オーガナイザーは南山大学の岡田悦典先生で,『被疑者弁護権の研究』では,「弁護人の援助を受ける権利」の制度的保証という観点から,被疑者弁護制度はいかにあるべきか,ということを論じておられます。アメリカでは,適切な弁護を受けられなかった場合には,「弁護人の援助を受ける権利」が侵害されたことを理由として控訴理由になり得るようですが,日本でも裁判員裁判が導入にともなって,争われることが増えるのでしょうね。

 今週末は,奄美ひまわりの引継式です。今週も,全国各地を飛び回っています。 

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ニュース 被疑者国選の対応態勢

 全国の約2万5000人の弁護士のうち、53.7%に当たる1万3450人が、刑事事件の国選弁護を引き受ける契約を結んでいることが17日、日本司法支援センター(法テラス)の集計などで分かった。最高の宮崎(94.7%)など9割以上が4県、最低は東京の39.1%だったが、弁護士数が似通った県同士でも契約率にばらつきが見られた。

 被疑者国選の対象事件の拡大が来年に迫っています。現在は,被疑者国選の対象は原則として法定合議事件に限定されていますが(約7000件),来年には,これが必要的弁護事件(約10万件)に拡大されます。もちろん,刑事事件自体が減少傾向にありますし,被疑者国選弁護は請求選任ですから,全件に対応が必要であるとは限らないのですが,それでも,現在の10倍以上に増加することは間違いなく,とくに弁護士の不足している地方では,その対応態勢の確立が正念場を迎えています。

 日弁連は被疑者国選対応態勢本部を設置して,対応態勢の確立に取り組んでいますが,この間の取り組みによって,一般国選弁護人契約の契約率は上昇傾向にあり,2006年10月の法テラスの業務開始当時は約8000人程度であったのが,現在では1万3000人に達しており,1.5倍以上に増加しています。しかし,時事通信の記事にあるように,契約率は地域によってばらつきがあり,宮崎は94.7%と高いのですが,東京は39.1%にとどまっており,一部の地域では,対応が極めて困難であるという意見もあります。

 被疑者国選を受任する弁護士が不足しているのですから,この問題を解決するためには,(1)「一般契約弁護士(ジュディケア弁護士)」を増やすか,(2)「スタッフ弁護士」を増やすか,のどちらかしかなく,前者はさらに,(a)弁護士の「人数」を増やすか,(b)弁護士の「契約率」を高めるか,のどちらかしかない,ということになります。

 まず,(a)弁護士の「人数」を増やすためには,都市型公設事務所やひまわり基金法律事務所の開設,定着支援の利用という方法があり,これを検討している単位弁護士会もあります(たとえば,兵庫県弁護士会や千葉県弁護士会)。また,(b)「契約率」を高めるためには,契約しない理由が問題であり,思想信条を理由とする契約拒否はあきらめるほかないでしょう。しかし,負担加重や報酬低額を理由とする場合には,せめて実費だけでも支払われるよう,国選弁護報酬の増額を求めていくことが考えられます。

 しかし,契約しても受任しない弁護士や,受任しても十分な弁護活動をしない弁護士もいるでしょうから,実質的な対応態勢をどのように確立するか,という契約率から把握できない問題は残ります。これについては,刑事弁護ガイドラインで議論された,刑事弁護の質を評価することが許されるか,刑事弁護の独立性に反するのではないか,という問題をどう考えるかでしょう。個人的には,社会的に耳目を集めている評価の微妙な事案はともかく,明らかな「手抜き弁護」を排除するのに,そのような大げさな議論をする必要はない,と思います。

 (2)スタッフ弁護士については,地域事務所を設置して配置することになりますが,中期計画で4号対応地域事務所の設置地域が実質的ゼロワン地域に限定されていることかネックになります。私は,総合法律支援法30条1項4号の文言からは,実質的ゼロワン地域に限定する必要はなく,実質的な必要性を判断して配置すればよい,と考えていますが(「司法過疎対策業務の課題」ジュリスト1305号),スタッフ弁護士が有償業務を行うことに,地元弁護士や弁護士会から反対の意見もあるようです。

 しかし,これは,業務の補完性(同法32条3項)の問題ですが,大規模・中規模支部はともかく,小規模支部では,有償業務のニーズにも対応する必要があるはずであり,それを扶助・国選しかやらせないというのは,一般の開業弁護士のエゴではないでしょうか。スタッフ弁護士も,一般の開業弁護士と同じように扶助・国選を担当し,有償業務も担当する,というスキームにすべきであり,そうでなければ,誰もスタッフ弁護士に応募しなくなるでしょう。「被疑者国選は負担が大きいから,スタッフ弁護士にやらせればよい」という発想が出てくること自体が,同じ弁護士として信じがたいことです。

時事通信の記事
http://news.fresheye.com/article/fenwnews2/1100001/20080517144300_ji_tsX312/a/index.html

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ニュース 自殺防止と弁護士過疎問題

 07年度の県民生活センターと各地方振興局の消費生活相談室に寄せられた多重債務の相談件数が、4年ぶりに増加したことが同センターのまとめで分かった。県は今年度から全国的にも多い年間300回を超える弁護士無料相談会を開催。その背景には弁護士過疎地域の県北や沿岸で、借金苦などを理由に自殺する人が多い実態があり、同センターでは「まず相談を」と呼びかけている。

 「弁護士過疎と自殺率には相関関係があるのではないか」という指摘が以前からあります。自殺率が高い秋田,岩手,青森はいずれも弁護士が少なく,岩手県の中でも沿岸(釜石,大船渡,宮古)と県北(二戸,久慈)は,弁護士過疎地域だからです(ただし,県民性や高齢化も関係していることは間違いありません)。自殺の原因・動機のうち,経済生活問題が相当数を占めることを考えると,両者の間には相関関係があると考えるべきでしょう(現場の弁護士の多くが,そのような実感を持っていると思います)。

 私は,以前,「弁護士過疎が解消されると,自殺率が低下するのではないか」という仮説を立てて,それを実証しようと試みたことがあります。しかし,自殺率の統計は数年前のものしかなく,ここ数年で急速に進展した弁護士過疎対策との相関関係を分析するには,データが足りませんでした。しかし,あと数年もすれば,その相関関係を分析することが可能になるはずであると確信しています。

 これまでは,自殺防止の取り組みと,多重債務問題や弁護士過疎問題の取り組みが十分に連携できていませんでした。しかし,今後は,弁護士が地方自治体や保健師,医師と連携して,自殺防止の取り組みに積極的に参加することが必要でしょう。地域住民の「生活」と「生命」を守るために,行政と民間あるいは医療・福祉と司法の壁を越えて,専門家と自治体の連携が求められているように思います。

毎日新聞の記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080517-00000057-mailo-l03

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ニュース 小笠原法律相談

 弁護士が1人もいない“弁護士過疎地”の伊豆諸島・小笠原諸島で、7年間にわたり法律相談を行っている弁護士がいる。東京・四谷に事務所を構える小海(こかい)範亮(のりあき)弁護士(36)。費用はほぼ自己負担で、渡航はすでに60回以上に及ぶ。「離島の住民の不利益を見過ごせない」と、都心に拠点を置きながら「島弁」としての活動を続けている。

 東京は,全国の弁護士の約半数が集中しており,弁護士「過密地域」です。しかし,その東京にも,弁護士「過疎」地域はあります。伊豆諸島や小笠原諸島がその代表例です(そのほか,多摩地域の青梅簡裁の管轄地域は,弁護士過疎地域と言ってもよいでしょう)。

 八丈島に簡易裁判所と家庭裁判所の出張所がありますが,その他の島には裁判所もなく,弁護士もいません。そのため,小海先生のグループが,小笠原諸島での法律相談を行って来ました。渡航は延べ60回以上に及ぶとのことであり,頭が下がります。

 私も弁護士になって1年目に,八丈島の刑事事件を受任したことがあります。否認事件であったため,飛行機で八丈島に通い,接見を繰り返しました。羽田空港から八丈島までは1時間程度であり日帰りが可能ですが,経済的にも体力的にも厳しかったことを覚えています(検察官は,ヘリコプターを使って八丈島に飛び,手書きで供述調書を作成していました)。

 日弁連や法テラスばかりが注目されがちですが,こうした自主的な活動が取り上げられるのはいいことですね。小海先生,がんばってください。応援しています。

 産経新聞の記事
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080507/trl0805072145003-n1.htm

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ニュース 岩手銀河法律事務所

 岩手弁護士会には現在69人の弁護士が所属するが、ほとんどは盛岡に集中。県北沿岸や奥州市などの県南の大半は弁護士が少ない「司法過疎」の地域だ。

 それだけに松本さんにも次々と案件が舞い込む。まだ仕事に慣れていないため、書類作成も人の3倍は時間がかかる。休日出勤も当たり前。仕事の魅力や楽しさを感じる精神的な余裕がない。

 しかし、弁護士のアドバイス一つで依頼人の人生を左右しかねない。だから頑張れる。「この仕事は人が一番困っているところに携われる。社会的に意義があるんだ」。若き「イソ弁」はその思いを胸に今日も激務に励む。

 岩手県奥州市の新人弁護士,松本さんの奮闘を報じる毎日新聞の記事です。ひまわり,法テラスに赴任した弁護士の記事は多いですが,一般の勤務弁護士(イソ弁)を取材した記事はめずらしいですね。

 岩手銀河法律事務所は,岩手県で唯一の弁護士法人であり,本店は水沢(奥州市)ですが,盛岡と大船渡に支店を展開しています。松本さんも,将来は,ひまわりか法テラスに赴任する予定と聞いていますが,楽しみです。がんばってください,応援しています。

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/area/iwate/news/20080508ddlk03040059000c.html

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ニュース 「弁護士ゼロ地域」解消へ

 裁判所があるのに弁護士が一人もいない「弁護士ゼロ地域」が解消されることになった。福岡地裁柳川支部管内で今月1日、弁護士が事務所を開き、最後に残った大津地裁長浜支部管内でも6月に弁護士が開業する。開業資金の貸し付けなどの施策を講じてきた日本弁護士連合会は今後も地方の弁護士育成を進め、都市部に偏在する状況の緩和を目指す。

 本年6月2日に「弁護士ゼロ地域」が解消される予定です。「弁護士ゼロワン地域」とは,地方裁判所支部単位で弁護士が0又は1人の地域のことをいいます(なお,韓国では「無弁村」という言葉を使っているそうです)。

 「弁護士ゼロワン地域」という言葉がはじめて公式に使われたのは,1993(平成5)年に開催された日弁連の第8回業務改革シンポジウム(香川県高松市)です。そこで発表された「弁護士ゼロワンマップ」は,全国の地裁支部の37%に相当する74支部は「弁護士ゼロワン地域」であると指摘し,マスコミで「法の隙間」として報道されるなど,大きな反響を呼びました(なお,全国の地方裁判所支部は203か所あります)。

 日弁連は,1996(平成8)年の定期総会において,「弁護士過疎地域における法律相談体制の確立に関する宣言」(「名古屋宣言」と呼ばれています)を採択し,「弁護士過疎・偏在問題の解決のために全力をあげて取組むことを決意するとともに,当面の措置として5年以内に,いわゆる0~1地域を中心として緊急に対策を講ずべき弁護士過疎地域に法律相談センターを設置するなど,市民が容易に弁護士に相談し,依頼することができる体制を確立するよう最善を尽くす」と宣言しました(なお,1996(平成8)年4月の弁護士ゼロ地域は47か所,ワン地域は31か所でした)。

 日弁連は,弁護士過疎地域を解消するための活動資金として,1999(平成11)年に東京弁護士会から寄付を受けて「ひまわり基金」を設置し,同年の定期総会において日弁連の全会員から毎月1000円の特別会費の徴収を採択しました(その後,特別会費の徴収額は,1500円,1400円に増額,減額されました)。2000年の定期総会において「司法サービスの全国地域への展開に関する決議」を採択し,それに基づき,2001年に「司法サービスの全国展開に関する行動計画」を策定しました。そして,ゼロワン地域を中心とする弁護士過疎地域に法律相談センター,公設事務所の設置を進めてきました。

 また,2006(平成18)年には日本司法支援センター(法テラス)が業務を開始し,司法過疎対応地域事務所(法30条1項4号所定の業務を行うので,「4号業務対応地域事務所」と呼ばれています)を開設し,常勤スタッフ弁護士を配置するようになりました。日弁連は,そこでも,常勤スタッフ弁護士を確保,養成及び支援する重要な役割を担って来ました。

 更に,2007(平成19)年には「弁護士偏在解消のための経済的支援」のパイロット事業が承認され,2008年(平成20)年1月から正式に,弁護士偏在地域に独立開業する弁護士(偏在対応弁護士)の支援及び偏在対応弁護士を養成する弁護士に対する支援を開始しています。

 こうした日弁連の弁護士過疎対策により,弁護士過疎対策は大きく進展しました。現在,法律相談センターは全国に308か所(そのうち,ひまわり基金の援助を受けているセンターは138か所),弁護士常駐型公設事務所は延べ86か所(そのうち,定着した弁護士常駐型公設事務所は15か所),ひまわり基金の定着支援は17件(そのうち,弁護士法人の定着支援は2件)法テラスの司法過疎対応地域事務所は15か所,拠点事務所は1か所,独立開業支援を利用して定着した弁護士は5名にのぼります。

 それにともない,「弁護士ゼロワン地域」は急速に減少し,2008(平成20)年4月1日現在,「弁護士ゼロ地域」は2か所,「弁護士ワン地域」は22か所となりました。残された2つの「弁護士ゼロ地域」のうち,福岡地裁柳川支部と大津地裁長浜支部についても,本年5月及び6月を目途に定着する弁護士が現れる予定です(福岡地裁柳川支部には,5月1日に弁護士登録が行われました)。そして,最後の弁護士ゼロ地域である大津地裁長浜支部にも,薮下さんが独立開業されることになりました。

 「弁護士ゼロワンマップ」の発表から15年,名古屋宣言から12年を経た今年,「弁護士ゼロ地域」は解消されることになったのです。全国のすべての地方裁判所支部には最低でも1人は弁護士がいるということであり,きわめて大きな意義があると思います。

 日弁連で弁護士過疎問題に取り組む田岡直博弁護士は「法科大学院との協力なども考えていきたい」と話している。

 ただ,これですべての問題が解決したわけではありません。

 依然として,新人弁護士の約50%は東京に就職しており,弁護士の大都市集中傾向は変わっていません。地方に定着(独立開業)する弁護士が現れることは理想的ですが,地元ならではのやりづらさもあります。家族の理解,生活の不安等から定着が難しい地域もあるでしょう。いったん定着しても,その後に転出したり,高齢や病気のために廃業してしまうこともあるかもしれません。

 ひまわり基金公設事務所や法テラスのスタッフ弁護士は有効な方策ですが,あくまで任期制の事務所ですから,後任の弁護士を確保し続けなくてはなりません。司法修習生やロースクールの学生を,ひまわり基金公設事務所や法テラスで受け入れることも考える必要があるでしょう。また,事務所が増えてくると,当然採算が取れないために日弁連等による資金援助が必要な事務所も出てくるでしょう。制度を安定的に運営するためには,「人」と「金」の問題は避けて通れません。

 また,弁護士過疎地域のとらえ方も,変えていく必要があるでしょう。地方裁判所支部単位での「弁護士ゼロワン地域」だけを問題にするのではなく,独立簡易裁判所・家庭裁判所出張所の所在地の中にも,弁護士が必要な地域もあるでしょう。そもそも裁判所の配置や管轄が,地域の実情に合致していない,という問題も以前から指摘されています(たとえば,水戸地裁麻生支部など)。弁護士が2人いれば足りる,ということではなく,実質的に地域住民のニーズに応えられることが重要です。

 弁護士の中には,さまざまな理由から「法テラスと契約しない」「刑事事件はやらない」「債務整理はやらない」という弁護士もいます。また,女性の弁護士の多くは大都市や県庁所在地に集中しており,女性弁護士が不足している,という問題もあります(女性弁護士の大都市集中傾向は男性のそれより顕著であり,函館弁護士会のように,女性弁護士が1人もいない単位弁護士会もあります)。「弁護士ゼロワン地域」を解消したら終わり,ということではなく,地域住民のニーズに応える人的・物的な体制を整備することが必要でしょう。

 そのためには,弁護士を増やすだけでは不十分であり,ひまわり基金や法テラスなどの施策と同時に,裁判所・検察庁や地方自治体の体制等を充実させていくことが必要になります。過疎地の地方裁判所支部の多くは裁判官が常駐しておらず,本庁や近隣の支部から出張して来ています。そのため,開廷日が週1回,週2回という支部が少なくありません。もっとも開廷日が少ないのは,松江地裁西郷支部で,年8回(3か月に2回)しか開廷されていません。

 また,地方自治体の法律相談事業も,厳しい財政状況のため縮小傾向にあります。多重債務や高齢者・障害者問題など,弁護士と自治体の連携が求められる分野はまだまだあります。限られた予算と人員を活用して,効率的に司法システムを機能させるための工夫が求められることになるでしょう。電話会議やテレビ電話会議システム等の技術も活用すべきでしょう。裁判官不足の問題について言えば,弁護士任官や非常勤裁判官が,自治体の法律相談事業については,弁護士と各部署の連携・協力(ネットワーク)が,ひとつの鍵になるはずです。

 このように残された課題は少なくありませんが,それでも,日弁連・法テラスの弁護士過疎対策は大きな成果をあげてきたことは間違いありません。これまでの歩みを後戻りさせることなく,今こそ,これからの弁護士過疎対策のあり方を展望することが求められている,と言うべきでしょう。

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080508ddm012040027000c.html

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