来年5月までに導入される裁判員制度のスタートを前に、結論の異なる2種類の精神鑑定書を作成した鑑定医2人を同時に証言台に立たせて、交互に尋問する方式を取り入れた模擬裁判が26日、東京地裁(林正彦裁判長)で行われた。こうした尋問方式を模擬裁判で行うのは全国で初めて。
昨日から3日間,東京地裁刑事20部で,裁判員裁判の模擬裁判が行われています。事件は森一郎事件で,統合失調症の被告人が妄想に影響されて,レンタカー会社の従業員を殺害してしまったという殺人被告事件です。これまで東京三会では,いわゆるフル企画(私が弁護人の一人を務めました。)のほか,全員参加型の模擬裁判が2回行われています。これが,4回目の森一郎事件の模擬裁判ということになります。
この模擬裁判の目的は,鑑定人2人を対質することです。対質というのは,証人を2人同時に尋問することです。この模擬裁判では,簡易鑑定を行った太田医師と,本鑑定を行った横山医師の2人の意見が対立しているのですが,その2人を同時に証人尋問して,違いを浮かび上がらせようというわけです。私は今回は弁護人ではなく,被告人!で参加しました(どこかの新聞やテレビに映っていたかもしれません。)。
私も実際に対質を見るのははじめてでしたが,鑑定人のお二人がとても分かりやすく説明されていたこともあり,非常に分かりやすいと感じました。ただ,今回もそうでしたが,対質の場合には,まず裁判所から質問する必要があるでしょう。一方当事者からの尋問は,自分に有利な証言を引き出そうとするため,論争的な質問が多くなり,分かりづらいように思いました。証人が1人であれば,通常は請求者が主尋問を行えばよいのですが,対質の場合には証人が2人いますから,まず裁判所から尋問する方がよいと思います。
また,今回は鑑定人のお二人が,とても分かりやすい説明をしてくださいましたが,実際には議論がかみ合わない可能性もあると思います。たとえば,統合失調症であれば原則として心神喪失と考えるか(いわゆる不可知論),それとも症状と犯罪行為の関係を具体的に考えるか(いわゆる可知論),という大きく二つの考え方がありますが,これが違っている場合には,対質をしてもかみ合わないことが多いでしょう。共通の土台に立ってはじめて,考え方の違いが浮き彫りになるのではないか,などと感じました。
明日,論告・弁論のあとに最終評議の予定ですので,有罪になるか無罪になるか,心して判決を待ちたいと思います。
(2007年2月27日追記 心神耗弱で,懲役5年の判決となりました。)
産経新聞の記事
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080226/trl0802262021014-n1.htm