« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »

2008年1月

管理人近況 山鹿ひまわりの引継式に出席する予定です。

 遠野ひまわりの貞弘さんからブログを引き継いで,4か月あまりが経ちました。当初は,ひまわりや法テラスのイベントや事務所説明会の情報をお知らせする予定だったのですが,だんだんと私個人の意見を書くことが多くなってきました。できるだけ客観的な事実に基づいてコメントするように注意しているつもりですが,思わぬ誤りもあるかもしれません。その際には,コメント欄でご指摘いただけると幸いです。

 さて,知り合いが多く見てくださっているようですので,私の近況をお知らせしますと,日弁連の仕事と事務所の仕事がだいたい半々です。週のうち2,3日は日弁連の委員会に出席したり,対応室(日本司法支援センター対応室)で仕事をしています。ひまわりのブロック協議会や支援委員会に出席することもあれば,開所式や引継式に出席することもあります。今週は,今日から明日にかけて,山鹿ひまわりの引継式@熊本,土曜日から日曜日にかけて北海道ブロック協議会とひまわりの合同支援委員会@函館となっています。

 北から南まで日本全国を旅行できるのが,この仕事のいいところですね。今日はこれから山鹿ひまわりの引継式に出席して,山鹿の温泉に泊まる予定です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ニュース 検察審査会の統廃合

 国民から選ばれた審査員が、検察の不起訴処分が妥当かどうかを審査する検察審査会(検審)について、最高裁は21日、審査件数の実情に合わせ、全国の地裁・支部にある201の検審のうち50検審を減らす一方、東京、大阪など大都市圏の9地裁で計14検審を増やす統廃合案を公表した。

 最高裁判所は、今月21日、検察審査会の統廃合案を公表しました。現在、検察審査会は、全国の地裁本庁・支部の合計201か所に設置されていますが、このうち過去20年間の平均申立件数が年1回に満たない50か所を統廃合する予定だそうです。来年5月の改正検察審査会法の施行にあわせて実施予定で、これから各地方裁判所から弁護士会に対し協議が持ちかけられるそうです(改正前の検察審査会法1条が設置数の下限を定めていたが、改正法により削除されたため。)。

 具体的な統合対象庁は、以下のとおりです(括弧内は受入庁)。ほとんどが、いわゆる弁護士過疎地域,司法過疎地域といわれる地域です。

東京高裁

下田(沼津)、都留(甲府)、佐久(上田)、諏訪(松本)

大阪高裁

福知山(舞鶴)、柏原(伊丹)、洲本(神戸)、五條(葛城)、新宮(田辺)

名古屋高裁

熊野(津)、高山(岐阜)、武生(福井)、敦賀(福井)、輪島(七尾)、魚津(富山)

広島高裁

新見(岡山)、倉吉(鳥取)、出雲(松江)、浜田(松江)

福岡高裁

直方(飯塚)、田川(飯塚)、武雄(佐賀)、唐津(佐賀)、島原(長崎)、平戸(佐世保)、佐伯(大分)、竹田(大分)、日田(大分)、玉名(熊本)、山鹿(熊本)、人吉(熊本)、天草(熊本)、加治木(鹿児島)、川内(鹿児島)、日南(宮崎)

仙台高裁

石巻(仙台)、気仙沼(仙台)、遠野(盛岡)、宮古(盛岡)、横手(大曲)

札幌高裁

浦河(札幌)、江差(函館)、留萌(旭川)、稚内(旭川)、名寄(旭川)、網走(北見)

高松高裁

観音寺(丸亀)、阿南(徳島)、須崎(高知)、中村(高知)

 最高裁判所は、統廃合の理由について、おおむね次のように説明しているようです。

 申立人にとっては、申立ては郵送で行うのが通例であり、検察審査会に出頭する必要はないから、影響はほとんどない。他方、審査員にとっては、現状では申立件数が少ないので,実質的には参加の機会がない。それなのに,年4回は出頭してもらうことになっており,出頭の負担はある。そのため,苦情が出ることもある。統廃合すると、審査員に選ばれる確率が低くなるし、仮に選ばれた場合でも免除をゆるやかに認めれば、出頭の負担は軽くなる。したがって,統廃合は申立人にとっても,審査員に選ばれる人にとってもよいことである。

 しかし、ことはそう単純ではないように思います。

 そもそも検察審査会は、裁判員裁判と並ぶ、国民の司法参加のための制度です。平成16年の改正法により起訴議決が拘束力を持つようになり、検察審査会の権限が強化されました。これにより、検察審査会の性格は、大陪審(起訴陪審)に近づいたと評価できます。司法制度改革の一つの柱である国民の司法参加がせっかく拡充されようとしているのに、統廃合により地方の検察審査会をなくしてしまうのは、いかがなものでしょうか。

 既に指摘されていることですが,司法制度改革により、いろいろと新しい制度が導入されましたが、それらは原則として本庁だけを対象としています。裁判員裁判も、労働審判も、原則として支部では実施されません(裁判員裁判が実施される支部は、全国10か所だけです。)。八王子や北九州のように大きな支部でも、地家裁委員会はありません。むしろ、債権執行や不動産執行事件が本庁に集約されたり、刑事重大事件が本庁に起訴されるなど、支部の機能はどんどん縮小しています。これでは、地方の住民にとっては、何のための司法制度改革だか分かりません(なお,裁判所の問題ではありませんが,弁護士会の支部にも法人格が認められない,という問題があります。)。

 たしかに、審査員に選任された人にとっては、平日の昼間に裁判所に呼び出されて、審査する事件がないというのでは、苦情が出るのも当然でしょう。しかし、それなら集まる回数を減らせばよいのではないでしょうか。年4回でなければならない理由はないのですから、申立件数にあわせて集まる回数を減らせばよいだけでしょう。更にいえば,時間帯をもっと参加しやすい時間帯に変更してはいかがでしょうか。たとえば,市役所の協議会や審査会でも,夕方以降に開催する例が増えています。

 また、過去20年間で平均1件に満たないとありますが、申立件数を増やす努力はなされたのでしょうか。せっかく検察審査会の権限が強化され,国民の司法参加のための制度ができたのですから,もっと積極的に広報して利用してもらうためにどうすればよいか,と考えるのが筋ではないでしょか。日弁連の意見書でも,「制度自体を周知させるための取組みを継続的に行うべきであり、法教育の一項目として学校教育で取り上げたり、事業所や経営者団体などへの継続的な資料提供と宣伝・広報を行うべきである」と指摘しています。

日弁連・改正検察審査会法の施行に向けた意見書
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/060720_5.html

 また、過去20年という期間に合理性はあるのでしょうか。今回、統廃合の対象になった地域のほとんどは、いわゆる弁護士過疎地域です。数年前までは弁護士が全くいなかった地域も含まれています。こうした地域では、弁護士がいないのですから、申立てが少なかったとしても当然でしょう。しかし、日弁連や法テラスが弁護士過疎偏在対策を推し進めた結果、ようやく弁護士が増えてきました。ここ数年に限ってみれば、申立件数が増えているかもしれません。今回の統廃合は、こうした弁護士過疎偏在対策に逆行する動きのように思えます。

 もちろん、検察審査会を存続させると,職員の配置が必要になります。職員も公務員ですから、無駄なコストをかけることはできません。ですが、ほとんどの支部では、検察審査会の職員は裁判所の事務を手伝っているのが実態です。宮古支部の場合も、12人のうち2人は検察審査会の職員でしたが、じっさいには支部の仕事を手伝っていました。もちろん、本来のあり方からすれば、事務量が多いのであれば職員を増やせばよいのですが、なかなか職員が増えないので検察審査会の職員で補填しているのが実情であろうと思います。こうした観点からすると、今回の統廃合は実質的には支部の人員削減にほかなりません。

 弁護士の中でも、今回の統廃合について問題意識を持っている人は多くありません。支部に検察審査会があることすら知らない人もいるでしょうし、あってもなくても同じと思っている人もいるでしょう。しかし、考えてみてください。何のための国民の司法参加の制度なのでしょう。何のために裁判員裁判制度を導入し、検察審査会の権限を強化したのでしょう。それは、国民の考え方や価値観を司法に反映させるためです。国民自身が主権者として、この国のあり方に関わるためです。裁判員や審判員に選ばれても免除をゆるやかに認めれば足りる、ということにはなりません。

 もちろん、こうした事情を考慮しても、最終的に検察審査会の数が多すぎると判断されることはあり得るでしょう。裁判員裁判にしても、検察審査会にしても、すべての支部で実施することはできません。できる限り多くの裁判所で実施することの意義と、そのために必要なコストを比べながら、決めていくことにならざるを得ないのだろうと思います。私も絶対反対というつもりはありません。

 しかし、その場合でも、まず統廃合ありきの発想で進めるのではなく、どうすればコストをかけずに地方の住民の司法アクセスを向上させることができるか、司法に参加する機会を保障することができるか、を考えるべきでしょう。どうしてこれまで申立件数が少なかったのか,どうすればもっと利用しやすくなるのか。そうした問題についても,地方の住民の意見を聴くべきでしょう。そのためには、裁判所も、地方自治体や弁護士会、司法書士会の意見を聞く機会を設けるべきだと思います(これから協議を開始するということですから、じっさい意見を聞く予定なのでしょう。)。この問題に限らず,地域の司法のあり方については,法曹三者と地方の住民がともに考えていくことが求められているのではないでしょうか。

読売新聞の記事
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080121-OYT1T00642.htm?from=main1

北海道新聞の記事
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/71755.html

| | コメント (1) | トラックバック (1)

東京新聞「多摩に公設法律事務所 新制度対応で初 弁護士不足補う」

 来年から始まる裁判員制度に対応するため、東京弁護士会は三月、東京都立川市に「公設」の弁護士事務所「多摩パブリック法律事務所」をオープンする。多摩地区では事件数が多く、弁護士不足が深刻。「このままでは裁判員裁判に対応できない」との危機感が設立につながった。

 今年3月に多摩パブリック法律事務所が開設される予定です。多摩地域は、東京地裁の唯一の支部である八王子支部があり、裁判員裁判を実施することが予定されています。しかし、多摩支部の管轄地域が広大であることに加えて、事件数に比べて弁護士数が少ないため、裁判員裁判の対応態勢の確立が急がれていました。

 都市型公設事務所は全国9か所にありますが、裁判員裁判への対応を明確に打ち出したのは、多摩パブリックが初めてです。裁判員裁判は、専門性が要求されることに加え、連日的開廷に対応する必要があるため、一般の開業弁護士による対応には限界があります。こうした限界を克服するため、法テラスの多摩支部にもスタッフ弁護士が配置されていますが、それだけでなく、弁護士会が都市型公設事務所の設置を打ち出したことには、大きな意義があるというべきでしょう。

東京新聞の記事
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008012702082716.html

| | コメント (2) | トラックバック (0)

毎日新聞「法テラス奈良 身近なトラブルの相談に」

 日常的なトラブルを法的に手助けする「日本司法支援センター奈良地方事務所」(法テラス奈良)が06年10月に開業し、相談件数を伸ばしている。裁判所管内で弁護士が1人以下の「弁護士ゼロ・ワン地域」だった南和地方(五條市、吉野郡)にも昨年11月に「法テラス南和法律事務所」(大淀町)が運営をスタートし、弁護士不足の解消にめどがつく形となった。

 少し古いニュースですが、昨年11月に奈良県の大淀町に法テラス南和が解説され、西木さんが常駐するようになりました。大淀町は奈良地裁五條支部の管内にあります。五條支部は全国に4か所しかない弁護士ゼロ地域(地裁支部管内に弁護士が1人もいない)の一つでしたが、法テラスの開所により解消されました。

 開設地域として大淀町が選ばれた理由は、一つは、五條支部のある五條市には弁護士法人の支所が開設されているため、同じ管内でも別の地域に開設した方が住民のアクセスが向上すると考えられたこと(吉野地域には、簡易裁判所があります。)。もう一つは、2009年から被疑者国選の対象範囲が拡大するため、警察署へのアクセスを考慮したこと、と聞いています。

 法テラスの司法過疎(4号業務)対応の事務所のうち、地裁支部所在地以外に開設されたのは、法テラス指宿(地裁支部は知覧支部であるが、指宿簡裁の所在地に開設)に続いて、2か所目です。

 本来、住民の観点からすれば、地裁支部の所在地や管轄にこだわることに合理的な理由はありません。地裁支部だけでなく、簡裁や警察署の所在地や、住民の意識や交通アクセスの容易さを考慮して、開設地域を検討すべきでしょう。また、弁護士の数も一応の目安にすぎず、その年齢、性別や活動実態を考慮して、実質的に司法アクセスに障害があると考えられる場合には、弁護士ゼロワン地域以外でも、司法過疎対応の事務所を開設することも検討すべきではないでしょうか。

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/area/nara/news/20080116ddlk29040566000c.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ニュース 法テラス三河に本多さんが常駐

 岡崎市康生通西3、森岡崎ビル2階の日本司法支援センター愛知地方事務所三河支部「法テラス三河」に法律事務所が開所、本多雅弁護士(33)がこのほど赴任し、常駐で業務に当たっている。
 本多さんは、地方裁判所書記官などを務めたあと、「市民と弁護士との距離をより近いものにしたい」と法テラスでの常勤を希望。東京都内の法律事務所で養成を受けてきた。

 本多さんは、裁判所書記官を勤めた後、桜丘法律事務所に入所して経験を積んでいました。私も共同して事件を受任したことがあります。そうしたご縁があり、今回、私も法テラス三河の開所式にも出席して来ました。開所式には、地元岡崎市の市長さんをはじめ、弁護士会三河支部の会員の先生方が多数出席しておられました。本多さんが地元に歓迎されていることが伝わってきました。

 名古屋地裁岡崎支部は、裁判員裁判を実施する支部の一つです。名古屋から近いとはいえ、弁護士会の三河支部は本会から独立しているようであり(もともと尾張と三河が別の国だからでしょうか)、2009年に裁判員裁判が始まると、その対応態勢が問題になりそうです。本多さんも、地元三河支部の先生方と共同して、裁判員裁判を担っていくことになるでしょう。これからのご活躍に期待したいと思います。がんばってください。

Mikawa1

東海愛知新聞
http://www.763.fm/tokai/080120.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

間部俊明「地域密着型法科大学院と弁護士過疎解消」法学セミナー638号(2008年2月号)

 先日,神奈川大学法科大学院で,「大量増員時代の生き方--弁護士過疎地のオンリーワン」と題して,講演とパネルディスカッションを行いましたが,その報告記事が法学セミナーに掲載されました。

 執筆してくださったのは,神奈川大学法科大学院の間部先生(弁護士,日弁連地域司法計画推進本部副本部長)です。

 当初,間部先生から依頼を受けたとき,「法科大学院」と「弁護士過疎解消」が上手くつながるのだろうかと不安でしたが,間部先生の適切な進行と,法科大学院委員長の阿部浩己先生(国際人権法で著名です。)のコメントに助けられ,エキサイティングな議論になりました。興味のある方は,記事をお読みいただければと思います。

神奈川大学大学院法務研究科講演「大量増員時代の生き方--弁護士過疎地のオンリーワン」
https://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=21044316&blog_id=267799

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ニュース 法テラス高知事務所開設

 日本司法支援センター(愛称・法テラス)は十六日、低所得者を対象に訴訟支援や刑事弁護を担当する「法テラス高知法律事務所」を高知市に開設し、所長に高宮大輔弁護士(31)が着任した。

 法テラス高知法律事務所の開設が報じられています。特徴的なのは,高知新聞は「低所得者の司法支援 」,毎日新聞は「弱者への活動に限定」と,どのメディアも「低所得者向け」を強調していることです。こういう見出しは,あまり見たことがありません。

 法テラスが低所得者のために取り組んでいることを広報するのはよいと思うのですが,「低所得者向け」と言われると相談しづらくなる方もいるのではないでしょうか。高齢者の中には,公的扶助を受給することに心理的な抵抗がある方もいらっしゃいますから。

 法律扶助の対象は(諸外国よりずっと狭いとはいえ)生活保護より広く所得5分位の第2分位までを対象としていますから,地方ではかなりの人が対象になるはずです。せっかくスタッフ弁護士が常駐するのですから,法律扶助の利用できる方には利用していただけるように,正しく広報していただくことが重要ではないでしょうか。

 いずれにせよ,高宮先生がんばってください。応援しています。

高知新聞の記事
http://www.kochinews.co.jp/

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/area/kochi/news/20080117ddlk39040612000c.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「森一郎事件 わかりやすいだけでは裁判員の納得は得られない」季刊刑事弁護53号78頁

 季刊刑事弁護53号の「連続特集 裁判員裁判をどう闘うか3 裁判員裁判における尋問技術」に,森一郎事件の報告を投稿しました。

 森一郎事件は,統合失調症の被告人が妄想に支配されて,レンタカー会社の社員(被害者)を殺害してしまったという殺人被告事件です。模擬裁判では,統合失調症者の責任能力が問題となり,(1)公判前整理手続における鑑定手続実施決定(裁判員法50条),(2)裁判員に対する裁判長の説明(同法66条5項),(3)裁判員にわかりやすい立証(裁判員規則40条)などが問題となります。

 本特集との関係では,(3)わかりやすい立証という観点から,鑑定の経過及び結果の報告の方法(鑑定結果の公判顕出方法)が問題となり,鑑定書の朗読によるべきか,鑑定人の尋問(証人尋問又は鑑定人尋問)によるべきか。また,鑑定人の尋問を行う場合でも一問一答(刑訴規則199条の13第1項),交互尋問(刑訴法304条3項,刑訴規則199条の2),個別尋問(刑訴規則123条)の方法によるべきか,物語式尋問,裁判所がまず尋問する方法(刑訴法304条1項),対質尋問(刑訴規則124条)によるべきか。更には,書面による報告ではなく,口頭による鑑定結果の報告(刑訴規則129条1項)を求めることはどうか,といったことが問題になります。

 私が弁護人をつとめた東京地裁のフル企画模擬裁判では,鑑定書の朗読と,鑑定人(横山医師)の尋問(証人尋問)が併用されましたが,現在進行中の全員参加型模擬裁判では,裁判長がまず尋問する方法,簡易鑑定人(太田医師)と鑑定人(横山医師)の対質尋問を行う方法などが試みられるようです。また,鹿児島地裁の模擬裁判では,鑑定人がプレゼンテーションソフトを用いて,鑑定結果を報告する方法(鑑定書は取り調べない)を用いたこともあったようです。

 こうした工夫は概ね裁判員には「分かりやすい。」と好評でしたから,鑑定書の内容は「理解」されたと評価してよいと思います。しかし,最終的な評議の結果をみると,「心神耗弱」が5名,「心神喪失」が1名であり,必ずしも鑑定結果は受けいられていません。つまり,「分かりやすい」だけでは,「裁判員の納得は得られない」のではないか,と考えられるのです(偶然にも,間光洋『専門家に対する主尋問の課題』も全く同じ問題を指摘しています。)。

 たとえば,検察官は「著しく障害」は「△」,「失われていた」は「×」などと単純化した図表を証人尋問や論告で用いましたが,こうした過度な単純化は表層的な理解に陥りがちで,本質的な理解ないし納得に到達することをむしろ妨げるのではないでしょうか。裁判員の1名が「腑に落ちない」と繰り返していたことが印象に残りました。こうした経験を踏まえて,「わかりやすい」だけではなく「裁判員の納得が得られる」ように,書証の朗読や尋問方法だけでなく,冒頭陳述から弁論に至る一連の説得のプロセスを工夫することが必要なのではないでしょうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ニュース 石西ひまわり基金法律事務所開設

 弁護士のいない地域に日本弁護士連合会などの基金で設置する公設事務所「石西ひまわり基金法律事務所」が10日、JR益田駅前のビル3階で業務を開始する。公設事務所は益田市では2か所目、県内では4か所目。常駐する山田さくら弁護士(29)は県西部では初の女性弁護士で、9日、県庁で記者会見し、「相談者の心に寄り添う弁護活動をしたい」と抱負を語った。

 島根県は,弁護士過疎対策の先進県です。2000年に石見ひまわり基金法律事務所(現・弁護士法人みやこ法律事務所),次いで益田ひまわり基金法律事務所(益田市),浜田ひまわり基金法律事務所(現・はまだ市民総合法律事務所)と開設されました。

 この度開設された「石西ひまわり基金法律事務所」は,島根県で4か所目の公設事務所となります。同一市町村に2つの公設事務所が開設されるのは,沖縄県石垣市の石垣ひまわり基金法律事務所(現・ふじい法律事務所)と八重山ひまわり基金法律事務所,長崎県島原市の島原ひまわり基金法律事務所と有明ひまわり基金法律事務所に次いで,全国3か所目となります。

 所長に着任したのは山田さくらさんです。山田さんは,第二東京弁護士会の紀尾井町法律事務所の出身ですが,公設事務所に赴任することを当初より希望して実務経験を積んでこられた,ということです。同じ第二東京弁護士会の会員として,また,公設事務所の仲間として,応援しています。がんばってください。

読売新聞の記事
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shimane/news/20080109-OYT8T00481.htm

中国新聞の記事
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200801100054.html

毎日新聞の記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080110-00000232-mailo-l32

| | コメント (0) | トラックバック (0)

桜丘法律事務所 採用面接(新61期)

 桜丘法律事務所では,弁護士の採用面接を,1月26日(土),27日(日)に行います。対象は新61期司法修習生で,採用予定は1名です。ひまわり基金の公設事務所か,法テラスのスタッフ弁護士に就任する意思があることが条件です。熱意ある司法修習生の方々のご応募をお待ちしています。

 新61期の弁護士採用面接は2008年1月26日、27日の両日に行う予定です。新61期からの採用予定は1名。1年程度のトレーニングの後、事務所の選択に従って法テラス又はひまわり公設事務所のいずれかに赴任する意思のある方を採用します。

 面接を希望される方は2008年1月7日以降1月24日までに履歴書(電子メールアドレス必須)と志望理由書(書式自由)をお送り下さい。送付(送信)方法は、郵送、FAX、電子メールのいずれでも結構です。折り返しお出で頂く時刻を指定させていただきます。

 電子メール送信先アドレスishimaru@sakuragaoka.gr.jp 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

京都新聞「長浜に待望の弁護士事務所『ゼロ地区』解消へ6月開業」

 裁判所があるのに常駐の弁護士事務所がなく、「ゼロ地区」と呼ばれる大津地裁長浜支部管内に今年6月、新しい事務所が開業する。司法過疎の対策として、日弁連が新設した支援制度を適用した全国初のケースで、近畿で唯一の「ゼロ地区」が解消することになる。

 日弁連は,1993年に業務改革シンポジウム@高松で「ゼロワンマップ」を発表し,1996年に定期総会@名古屋で「弁護士過疎地域における法律相談体制の確立に関する宣言(名古屋宣言)」を発表し,1999年に弁護士過疎解消のための「ひまわり基金」を設置するなど,地方裁判所支部の管内に弁護士が0又は1の地域を「ゼロワン地域」と呼んで,弁護士過疎対策を進めてきました。

 「ゼロワンマップ」が発表された1993年当時,地方裁判所支部203庁のうち,管内に弁護士が全くいない「ゼロ地域」は50か所,一人しかいない「ワン地域」は24か所あり,実に地方裁判所支部の36%を占めていました。また,これを地方裁判所支部に対応する市町村単位で見ると,全国面積の27%,全人口の8%を占めるとも言われていました。

 しかも,これは地方裁判所支部の管轄を単位としていますので,地方裁判所支部がない市町村(たとえば,簡易裁判所・家庭裁判所の所在地)は全く考慮の対象外でした。そこで,最低限,地方裁判所支部の管内には弁護士が2人はいる状態にしよう(弁護士が2人いなければ,早い者勝ちになってしまいますから)というのが日弁連の政策目標であったわけです。

 日弁連の取り組みは,1999年のひまわり基金の設置(公設事務所と定着支援の双方を含む。),2000年の公設事務所(ひまわり基金法律事務所)の開設,2006年の日本司法支援センター(法テラス)の発足と4号業務対応型地域事務所の設置,そして2007年の「弁護士偏在解消のための経済的支援策」と進められ,現在では,ゼロ地域は3か所,ワン地域は24か所まで減少しています(なお,記事にある「日弁連が新設した支援制度」とは「弁護士偏在解消のための経済的支援策」のことですが,「全国初」というの「定着準備支援制度」という制度の利用が全国初という意味です。)。

日弁連・弁護士過疎対策・法律相談事業の取り組み
http://www.nichibenren.or.jp/ja/committee/depopulation/kaso.html

 その残されたゼロ地域の一つである滋賀県長浜市(大津地裁長浜支部)に,今年6月を目途に法律事務所が開設され,弁護士が常駐することになりました。法律事務所を開設するのは,東京パブリック法律事務所出身の薮下さんです。藪下さんは,東京パブリック法律事務所で,公設事務所や法テラスに赴任するために経験を積んでいましたが,長浜市に弁護士が定着しないだけでなく,公設事務所や法テラスの設置も進まないことを懸念して,自ら独立開業することを決意された,とのことです。

 地元弁護士会が公設事務所や法テラスのスタッフ弁護士の誘致に消極的だったのは,隣接する彦根市(大津地裁彦根支部)に近いことや,大津市内に本所のある弁護士法人が非常駐の支所を開設しているからだと聞いています。このように弁護士法人の支所が開設されている地域は,先日法テラスの4号業務対応型地域事務所が開設され,ゼロワン地域を脱した奈良県五條市(奈良地裁五條支部),残されたゼロ地域の一つである大分県杵築市(大分地裁杵築支部)など,他にも多数あります(現在,日弁連のホームページでは,弁護士法人の支所が開設されている地域を赤字で表示しています。)。

 弁護士法人が支所を開設することが認められた理由の一つが弁護士過疎偏在対策にあった以上,このように都市部の弁護士法人が過疎地に支所を開設して,過疎地のリーガルサービスに応えようとする姿勢は高く評価されるべきですし,決して公設事務所や法テラスの方が優れているというつもありはありません。弁護士法人には,大津と長浜のどちらでも対応できるというメリットがあり,企業や相談者のリーガルサービスによりよく対応できる場合があることは間違いありません(宮古の例でいえば,宮古で相談を受けた事件の管轄が盛岡地裁の本庁や遠野支部になる場合や,宮古で相談を受けた人の紹介で,盛岡や花巻に住んでいる人の相談を受けなければならない場合があります。こういうときに,私は自分が盛岡や遠野に出張するか,盛岡や花巻の弁護士を紹介していましたが,弁護士法人であれば便利だと感じていました。)。

 しかし,やはり弁護士法人が一つしかないという状態は決して望ましいものではありません。企業や相談者にとっては選択肢が一つしかないよりは,複数ある方がよいに決まっています(相馬ひまわり基金法律事務所の葦名さんは,よく「私を選んだのではなく,私しか選べなかった相談者の期待を裏切らないよう」と言っていましたが,こうした謙虚さを忘れてはならないでしょう。)。また,弁護士が増えればその分だけ潜在的なリーガルニーズが喚起されると考えられますから,決して,弁護士法人の「仕事を奪う」ようなことにはならないはずです。高齢者や障害者など遠くに相談に行くことが難しい方々や,遠方の弁護士を依頼するための費用を用意できない方々もいらっしゃるはずです。じっさい,宮古は公設事務所が開設されて,はまなす法律事務所の横道先生と私の二人にになりましたし,釜石は藤原先生と瀧上さんの二人になりましたが,どちらも多忙を極めています。

 また,やはり弁護士が非常駐の事務所と,常駐の事務所では,後者の方が望ましいということです。この点については,複数の弁護士が交替で相談を受ける「法律相談センター」と,一人の弁護士が常駐して相談を受ける「公設事務所」では,後者の方が地域のリーガルニーズに対応する効果が大きいという調査結果があります(菅原郁夫「弁護士過疎地域における法律相談センターおよび公設弁護士事務所の機能に関する実態調査」名古屋大学法学論集207号79頁)。宮古でも公設事務所が設置されたことにより,法律相談センターの時代と比べて相談が3倍,事件は20倍に増えました。

 加えて,弁護士が常駐していることには,相談を受任する以上の意義があるはずです。複数の弁護士が交替するのではなく,一人の弁護士が常駐して行政の相談員から紹介を受けたり,関係機関と連携するなかで,相談のネットワークが生まれることが期待されるからです。東京大学社会科学研究所の佐藤岩夫先生は,このような現象を分析され,公設事務所や法テラスの弁護士が果たしている役割を「相談ネットワークの組織者」であると同時に「相談機関のメタ相談者」であると位置づけていましたが,弁護士がそのような役割を果たすためには,地域に常駐していることが不可欠であると考えられます(ただし,樫村先生の「司法過疎とその対策」日本法社会学会『訴訟機能の拡大と政策形成』は,公設事務所の弁護士の個性によって,ネットワークの形成に差があることを指摘しています。)。

 このように考えると,弁護士法人の支所が開設されているからと言って,リーガルニーズに十分対応できている,ということはできないのではないでしょうか。ましてや,弁護士が増えると仕事の奪い合いになるとかという批判に至っては,いったいどこにそのような実例があるのかと聞いてみたくなります。これまで,日弁連は全国各地の80か所以上に公設事務所を開設し,法テラスは10数カ所の4号業務対応型地域事務所を開設して来ましたが,ほとんどの事務所は十分な利益をあげています。また,滋賀県内でもたくさんの司法書士が訴訟関連業務を取り扱い,司法書士事務所を経営しているのであって,その分だけ弁護士が仕事を「奪われている」という見方さえ成り立ち得るのです。

 長浜に法律事務所を開設する藪下さんも,最初から相談がたくさん来るとか,利益があがるということはないかもしれませんが(事務所の経営が軌道に乗るには,それなりに期間が必要ですから),遠方にに相談に行くことができない高齢者・障害者の方々や,遠方の弁護士に依頼する金銭的に余裕がない方々など,藪下さんを必要としている市民がたくさんいるはずです。ぜひ,そうした方々のリーガルニーズに応え,当地での信頼を勝ち得てもらいたいと思います。

京都新聞の記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080101-00000005-kyt-l25

| | コメント (0) | トラックバック (0)

毎日新聞「ひと人えひめ:法テラス愛媛・常勤弁護士,藤原諭さん/愛媛」

 --どんな相談が多いのですか。

 相談内容の半分は債務問題です。ヤミ金融に手を出してしまった人、消費者金融の返済に困っている人などの債務整理をします。また刑事事件では、10月に伯方島で起きた中国人実習生による殺人事件の弁護も担当しています。無料相談は現在2週間待ちの状態です。

 藤原さんは,第二東京弁護士会の東京フロンティア基金法律事務所から,昨年,法テラス愛媛に赴任されました。松山市にスタッフ弁護士を配置することについては,愛媛県弁護士会の中でも賛否両論があったようですが,無料法律相談が2週間待ちであることや,離島で起きた殺人事件を受任していることからすると,当地では忙しい日々を送っておられるようです。

 私はまだ死刑求刑の事件を担当したことはありませんが,藤原さんのインタビュー記事を読むと,東京高裁で強盗殺人事件を担当して死刑求刑をされ,判決を読み上げるときに「人の命にかかわっている」と震えた,どんな被疑者にも何らかの言い分はある」と感じている,とあり感銘を受けました。

 藤原さんんのようなスタッフ弁護士が本庁に配置され,裁判員裁判などの刑事事件を担っていくことが,ひいては刑事弁護の質を高め,国民の信頼を得ることにもつながるのだろうと思います。

毎日新聞の記事
http://mainichi.jp/area/ehime/news/20071201ddlk38070713000c.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

毎日新聞「にいがた人模様:法テラス佐渡法律事務所弁護士・冨田さとこさん /新潟」

  「人の5倍働き、10倍遊ぶ」がモットー。しかし仕事に忙殺され「大いに遊ぶ」とまではいかなかった。それでも「スキューバダイビングを5回。コブダイ、メバル、ノドグロに出会えた。祭り好きなんですが、各地の祭り巡りも楽しめたし、稲刈りも経験しました」。島の生活も十分楽しんでいるようだった。

 冨田さんは,すっかり法テラスの代名詞として有名になりましたね。

 マスコミに取り上げられ有名になることは,行動範囲が狭くなったり,心ない人から誹謗中傷されたりと嫌な思いをすることもあるかもしれませんが,全国各地で弁護士の助けを必要としている人々のために,がんばっていただきたいと思います。

 私には,冨田さんのように「5倍働く」時間も「10倍遊ぶ」エネルギーもありませんが,東京から全力で応援しています。

毎日新聞の記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080106-00000103-mailo-l15

| | コメント (0) | トラックバック (0)

新年のごあいさつ

新年,あけましておめでとうございます。

 昨年は,公設事務所の任期を終えて東京に戻ったり,四国遍路で結願を達成したり,結婚したり,いろいろ人生の節目となる出来事がありました。

 今年は,新しいことに挑戦するだけでなく,きちんと勉強する時間をとったり,これまでの経験を後輩に伝えることに力を入れたいと思っています。

 どうぞ,よろしくお願いいたします。

Nengajo2008

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »