読売新聞「精神鑑定テーマに模擬裁判、「やはり難しい」と裁判員」
2009年に始まる裁判員制度に向け、精神鑑定をテーマにした模擬裁判が19日までの3日間、東京地裁で行われた。
難解な専門用語を避けて市民も理解できるよう工夫を凝らしたが、一部の裁判員からは「やっぱり難しい」との声が上がっていた。
この模擬裁判(森一郎事件)は,責任能力が争われる事件の審理方法を研究するために行われたものです。私は,弁護人の一人として参加しました。結果は,記事にあるように,心神喪失が3(裁判官2,裁判員1),心神耗弱が6(裁判官1,裁判員5)で,懲役6年となりました。鑑定人の意見は心神喪失でしたから,弁護団としては「負けた」ということになります。
しかし,私は「勝った」「負けた」ということより,裁判員が責任能力をきちんと理解し,意見を述べられることが分かったことに,非常に大きな意味があると感じました。評議では,責任能力の概念や判断方法をふまえた上で,「鑑定書はどうも腑に落ちない」「この点は,どう考えればよいのか」などと意見が述べられており,感動しました。
読売新聞は,「『やはり難しい』と裁判員」という見出しですが,記事をお読みいただければおわかりのように,「裁判員として参加した男性会社員は『裁判官の説明や証人尋問を通じて、わからなかった点もどんどんわかった』と評価したが、『責任能力とは何かは理解はできたが、事件にどう当てはめるかが難しかった』」という内容です。
また,毎日新聞は「精神鑑定、工夫で『分かる』」という逆の見出しです。「会社員ら6人の裁判員は『鑑定書や鑑定医の尋問はよく理解できた』と評価した」「刑事弁護に詳しい弁護士は『鑑定結果を理解したうえで、私たちプロが見落としていた市民の視点を投げかけた』とみる」とありますが,こちらが正しい評価だと思います。読売新聞の見出しは結論先にありきという感じで,あまり感心しませんね。
責任能力の判断は,私たちにとっても難しいものです。結果的に,裁判員は心神耗弱に流れましたが,どちらに転んでもおかしくなかったと思います。裁判官の判断が分かれたこともそのことを示しているといえるでしょう。弁護人としては,更に分かりやすい立証や説明を考えていかなければならないと思います。私としても,たいへん勉強になりました。
読売新聞の記事 精神鑑定テーマに模擬裁判、「やはり難しい」と裁判員
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071019icw6.htm
毎日新聞の記事 始まる裁判員制度:模擬裁判終了 精神鑑定、工夫で「分かる」 無罪ためらい
http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2007/10/20/20071020ddm012040067000c.html
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